地域に根を張るということ

初秋の風が吹き抜ける頃、中之条町伊勢町では伊勢宮の祇園祭が幕を開ける。山車が進み、八木節が響き渡り、商店街はあたたかな賑わいに包まれる。地元の人たちによる音楽や踊りにも、惜しみない拍手が送られる。

だが、その華やぎの裏で、きめ細やかな準備や交通整理といった地味な仕事を、誰かが黙々と支えている。

コロナ禍の閉塞感を抜け、祭りがようやく再開されたあの節目に、私は祭典幹事を二年、氏子総代を二年務めた。裏方の共同作業を地域の人々と重ねるなかで、初めて気づいたことがある。祭りを支えることは、そのまま地域を支えることなのだと。

長くこの土地に暮らしながら、どこか「よそ者気分」が抜けなかった自分がいた。それでも、二十年以上土に向き合ってきた自分と、祭りの裏方として汗を流した四年間とが重なり、いつしか私の足元は、確かにこの地域へと深く根を下ろしていた。

祭りの日に町を歩くと、知人と目が合う。普段より人との距離が近く感じられる。そこには人がいて、笑顔があり、音楽が流れている。そして自分もまた、その輪の中にいる。「同じ地域で暮らしているから、支える」——祭りには、そんな関係を育てる力がある。それはきっと、困難なときにこそ、大きな力になるものだ。

役割は毎年、次の人へと渡されていく。短い引き継ぎの挨拶にも、新しいつながりが生まれる。人から人へ、世代から世代へ。祭りは、地域の営みを静かに受け渡していく。「ああ、ここが自分の居場所なのだ」——そう思える瞬間が、そこにある。

地域に根を張るとは、特別なことではない。働き、暮らし、人と出会い、ときに誰かのために汗を流す。その日々の積み重ねが、やがて太い根になる。地域を守り育てることは、巡り巡って、我が国を支えることにもつながっていく。 失われた三十年をただ嘆くより、足元から少しずつ取り戻していく。畑で土を耕し汗を流すことも、祭りの裏方を支えることも、その確かな一つなのだ。

ローカルに、万歳。祭りは、やっぱりいい。

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