草を刈り、水を引く。八月最初の恒例行事

盆の気配が近づく八月最初の週末。農家の予定帳は、毎年同じ共同作業で埋まる。

土曜は、生家のある長野原町応桑の共同墓地へ向かう。朝六時集合を目指して五十分車を走らせた。着いた頃には皆すでに三十分前から作業を始めていた。

年に一度、墓地所有者が集まり、背丈ほどに伸びた雑草を刈払機でなぎ払う。自分の墓だけではない。墓地全体の際まできれいに刈り込み、お盆を迎える。それが、この地域に昔から受け継がれてきた習わしだ。

共同作業を終えると、一度生家へ戻って一休みした。その後、再び墓地へ向かい、両親と祖父母が眠る墓石を水洗いした。おおぼら山を見晴らす静かな野辺で、ご先祖様に静かに手を合わせる。そのひとときが、毎年の節目になっている。

翌日の日曜は、中之条町「間歩堰用水路」の共同除草である。

名久田川の取入口を前日にせき止め、この日は稲作耕作者全員が集まる。一年間たまった泥やコケをさらい、水路脇の草を刈る。泥まみれ、汗まみれの二時間。田んぼへ命の水を送り続けるために欠かせない仕事だ。

刈払機の刃先に神経を集中させ、目の前の藪を切り開いた瞬間だった。左手首に鋭い痛みが走る。「しまった。今年もやられた。」

アシナガバチの巣を直撃したらしい。十匹近くが一斉に飛び出した。一か所刺されただけで済んだのは、不幸中の幸いだった。家へ戻る頃には左腕はみるみる腫れ上がっていた。

同じ日には近くの公園の草刈り作業もあった。しかし、田んぼの命を支える用水路の作業を優先した。

両日とも刈払機を持参。作業効率は高い反面、一歩間違えば大きな事故にもつながる。それでも、この汗がなければ、秋に黄金色の稲穂は実らない。

気になるのは、人手不足である。地域の共同作業は、担い手が減れば続けられない。

参加者は年々減り、顔ぶれはシニア世代が目立つ。欠席すれば出不足金二千円。それでも問題は、お金ではない。

地域の人と顔を合わせ、ともに汗を流し、この土地を守る。その積み重ねが地域を支え、農業を支えている。

墓を守ることも、水を守ることも、突き詰めれば命を守ることだ。
ご先祖様から受け継いだこの土地を、次の世代へつなぐために。
今年も、草を刈り、水を引く。それが、この地で生きる農家の日常である。

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